日本語にない母音と、アクセントで変わる母音の質
Ыは、日本語の「イ」とも「ウ」とも違う母音です。音声学では「非円唇・後舌・狭母音」[ɨ] と呼ばれます。
日本語の「イ」は舌が前にあり唇が横に広がりますが、Ыは舌を後ろに引いたまま「イ」のような音を出します。「ウ」の舌の位置で「イ」を言おうとすると近い音が出ます。
「お腹を殴られたときの『ウッ』がЫだ」という説明を聞くことがありますが、これは正確ではありません。Ыは普通の母音であり、特殊な力みや緊張は必要ありません。「ウ」の舌位置で「イ」と言う、これが最もシンプルで正確な方法です。
| ロシア語 | 発音ヒント | 意味 |
|---|---|---|
| мы | ムィ | 私たち |
| вы | ヴィ(唇歯+ィ) | あなた(丁寧) |
| сыр | スィル | チーズ |
| рыба | ルィバ | 魚 |
| язык | イズィーク | 言語・舌 |
| быстро | ブィストラ | 速く |
ロシア語では、アクセント(ストレス)が置かれた母音ははっきり発音されますが、アクセントのない母音は弱く短くなり、音が変わります。これを「母音弱化」(ぼいんじゃっか)と言います。
日本語にはこの現象がないため、日本語話者は全ての母音を同じ強さで発音しがちです。
О がアクセントなしの場合:
アクセントの1つ前の音節では「ア」[ɐ] に近くなります。それ以外の位置ではさらに弱い「ァ」[ə] になります。
例:молоко́(牛乳)のアクセントは最後の「о́」にあります。
→ молоко́ = 書くとき全て「о」ですが、
→ 発音は「マラコー」に近い(アクセントのない「о」は「ア」に変わる)。
Е がアクセントなしの場合:
「イ」[ɪ] に近い音になります。
例:весна́(春)→ 「ヴィスナー」(最初のеはアクセントなしで「イ」に近づく)
すべての母音弱化を覚える必要はありません。まずは「アクセントのないОはアに近くなる」というルールだけ覚えておけば、ロシア語らしい発音に大きく近づきます。